

▲160kmを超えると、みんなの顔が苦しそうに……
立ちはだかる100kmの壁
80km、90kmと進むにつれ、古傷の左ヒザが痛い。愛用のレーサーパンツとサドルだが、お尻の感覚もなくなってきた。これが100kmの壁か……。ここでもう一つの壁が出現。それは、眠気との闘い。あまりのつらさに脳ミソがシャットダウンしようとしているかのよう。「眠たい- - -!」「わ- - -!」「きゃ- - -!」と、叫んで眠気を覚まそうとする。まさか眠気に襲われるとは……。前夜はしっかり寝なきゃと痛感。両津BS(弁当ステーション)に到着したのは11時40分。予定より40分遅れ。が、もう腕の感覚までもがマヒしている。ボトルケージからボトルが引っこ抜けないのだ。はじき野ASでの元気は30kmの間に跡形もなくなった。声を出す元気もない。ストレッチをしながら、たくあんを口に入れ、ミソ汁をすするのが精一杯。210kmコースの両津BS出発制限時間は12時。しんどい。心はとっくに折れている。でも、悔しい。行けるかぎりは進まなきゃ。いや、進みたい。
制限時間ギリギリに両津BSを飛び出る。あと110kmと思わずに、10km先、10km先を目標に行けというアドバイスに従い、地道にペダルを回す。両津を出て10kmを過ぎたころ、海から霧がわき上がってきた。先ほどまでのカンカン照りがウソのように、周囲はまっ白。一気に気温が下がって寒い……。両津で長ソデウエアを脱がなくてよかった。寒暖の差を制する者が佐渡を制すということか……。そしてもう一つ、悪夢のような感覚が襲ってきた。「ヤバイ……お腹がすいた……」。

▲ひたすら続く海岸線を最後を走るスタッフから逃げるように走る。走るか、やめるか、やめさせられるか……
回収車を待つ、道端に座り込んだ参加者を横目に、140km地点の多田ASに着いたのは14時38分。予定より1時間遅れ。22km先の小木ASの制限時間は52分後。ここで回収された。回収車に乗り込んでイスに座り込んだとたん、せきを切ったように涙が止まらなくなった。やはり、佐渡は夢に見たように甘くはなかった……。