佐渡での「9時間切り」を宣言してしまった 本誌編集長・岩田。
竹谷賢二さんに立派なトレーニングメニューを 作ってもらったはいいが
実際にトレーニングはちゃんとできたのか?
三船雅彦さんのアドバイスを得たとしても、
2年前より2時間も短縮するなんて、 本当にできるのか!?
48歳オヤジの無謀とも思える自分へのチャレンジが、今始まる!
text●本誌・岩田 photo●山内潤也
※このページは自転車専門誌サイクルスポーツの協力を得て
同誌2010年7月号の記事をベースに制作しました
▲Z坂手前「外海府海岸」付近。海抜0mの田園地帯を抜ける。午前中は少し曇って気温も低く、一昨年の晴れのときより走りやすかった
※写真はクリックすると拡大します。
■降水確率はなんと10%
晴れた。
宿の窓を開けて確認する。競輪補助事業として行なわれるこの佐渡ロングライドは、これまでの4回開催中、3回が雨にたたられている。オレが前回完走した第3回大会は、唯一の晴れだった。今回も1週間前まで50%の降水確率だった。また雨か……。暗い気持ちになったのは、すべての参加者とも同じだろう。
今回、9時間切りを宣言していたが、それは晴れたときのこと。雨なら完走で十分だ。だが開催日が近づくにつれ、降水確率はみるみる低くなり、ついに10%に。
「9時間……切れるかなあ」
窓から明るい佐渡の海を見ながら、思わずつぶやく。かえって雨が降ったほうがいいかも、と思っていたのは、エントリー3400人のうち、オレだけかもしれない。
■ハートレートはいきなり170超え
5時45分、スタートだ。
すぐにデイヴィッドさんが先頭に出てペースをつくる。何人かに抜かれるが、なんとか先頭集団についていく。だが10km地点あたりでその集団についていけなくなる。オレにはペースが速すぎる。だんだんデイヴィッドさんの背中が遠くなる。
待ってくれ……。
遠くに見え隠れしていた集団が完全に見えなくなるころ、後ろから別のトレインがやってきた。すかさず最後尾に飛び乗る。これも速い! 時速35km以上で飛ばしている。心拍計の数字が170を超える。でもついていける。このペースについていけないようでは、到底9時間切りなんてできないのだ。そう自分に言い聞かせて懸命に踏む。
トレインのレベルが高いのは、アベレージスピードの高さだけではなく、そのスピードが上りに入ってもそれほど落ちないことからもわかる。上りにかかると先頭がダンシングを始め、それを合図に後続が次々とダンシングに入る。モリモリ坂を上っていく。オレも必死で腰を上げる。暑くなったらウインドブレーカーを脱ごうと思っていたが、とてもそんな余裕はない。ついていくだけで精一杯だ。
■佐渡の景色はやっぱり最高だ!
20km地点の相川AS(エイドステーション)をパス。「お疲れさま、ASですよ」と旗を振るボランティアに、まっすぐ方向を指さして直進する意思を伝える。今回は休憩を少なく、そして短くしてタイムアップを図る作戦だ。少なくとも3つめの、はじき野ASまではノンストップでいきたい。
ここでトレインがバラけ、また別のトレインに。それにつけなくなると、また別のトレインに。すでにトップグループというわけではないが、このあたりを走っている人たちは、やはりレベルが高い。ひたすら追走する。そんなことを繰り返しながら40kmの入崎ASもパス。あっという間にZ坂が前方に見えてくる。7時45分。スタートからジャスト2時間だ。
今回、マシンはおニューの愛車、デダチャイストラーダ・テメラリオ。これがイベントデビューだ。これまで乗っていたアルミフレーム+カーボンバックに比べ、格段に軽い。そして剛性が高く、ペダルを踏む力がそのまま推進力に変わる感じだ。これまではフロントトリプルを愛用してきたが、このテメラリオなら必要ないほど。それで今回はフロントコンパクトに11T~28Tというワイドギヤを装備してきた。
Z坂は意外なほどあっけなくクリア。息は荒くなるが、景色を見る余裕がある。こんなもんだっけ、Z坂? 景色はやはりすばらしい。Z坂からの下り(通称「裏Z」)では、坂を上り切ったご褒美(ほうび)のように、美しい海が迎えてくれる。イヤッホー!!
■Fin'sのみなさんありがとう!
高低差100mの「大野亀坂」も無難にこなして72km地点のはじき野ASでピットイン。8時20分。ボトルの水もまだあったし、補給も必要なかったが、トイレに寄った。カメラマンに位置を電話連絡、カットしたオレンジを2?3個絞り込んで、5分で再スタート。細かなアップダウンを繰り返しながら両津を目指す。トレインはほとんど組めない。というか、なぜか前後にあまり人がいなくなってしまった。
9時30分、両津BS(弁当ステーション)着。かなり先頭のほうを走っているだろうと思っていたが、すでに100人くらいの参加者が先着していて驚いた。すっかり30番目くらいで走っているかと思っていたのに。弁当を食べている人のなかに女性までいて、さらにびっくり。
前回はここで弁当をもらうのに、並ぶ列が長くて時間を食ってしまったが、今回はすんなりもらえた。ここで朝生つぐみさんのチーム「ASHIGAL」の関根さんと澤口さんに会う。いっしょに握り飯をほおばりながら、時計を見る。ここまで100km。それを3時間45分で走っている。このペースでいくと、9時間どころか8時間も切れるんじゃないか!?
一気に欲が出た。もし来年、また佐渡を走るとしても、もう8時間は切れないかもしれない。今年できるなら、ぜひ達成しておきたい。年齢を考えると、できるときにやっておかないと、と思う。
当初のスケジュールだと、ここで30分は使えるはずだった。それを20分で切り上げる。行こう!
関根さんたちが「一緒に走りましょう!」と言ってくれる。ありがたい。2人ともかなりの健脚だ。これなら8時間切れるかも。だが両津BSを出てすぐにぶっチギられ、信号にオレだけ引っかかり、2人は見えなくなった。おい……。
「一緒に行きますか?」そこへ後ろからやってきた、長岡のショップ、サイクルワークスFin'sのジャージを着た2人組が声をかけてくれた。あ、はい。しばらくこの2人を含む数人でトレインを組むが、やはりペースが速い。というか、オレがバテてきているのか? 上りでつらくなり、「すいません、オーバーペースです」と言ってチギれようとすると、わざわざペースを落としてくれた。ありがとうございます!
